第31回東京国際映画祭(TIFF)コンペティション部門国際審査員記者会見レポート

南果歩「世界中の映画人が東京国際映画祭に関心を持ってもらえるように、思い出深い第31回にしたい」と気力、体力十分にホスト役としての意気込みを語る!


2018年10月26日(金)に第31回東京国際映画祭(31th Tokyo International Film Festival ; TIFF)のコンペティション部門の審査員記者会見が行われた。審査員長であるブリランテ・メンドーサ(映画監督)、ブライアン・バーグ(プロデューサー)、タラネ・アリドュスティ(女優)、スタンリー・クワン(映画監督/プロデューサー)、南果歩(女優)がメイン会場であるTOHOシネマズ六本木ヒルズに集合した。

今回のコンペティション部門には、世界109の国と地域から1,829本の応募があり、16本が選ばれている。11月2日(金)に東京グランプリをはじめとする各賞が決定される。

《記者会見レポート》

――審査委員のみなさまにひと言ずつご挨拶をお願いします。

ブリランテ・メンドーサ:みなさま、おはようございます。コンペティション部門の審査員記者会見にお越しくださいまして、ありがとうございます。
ブライアン・バーグ:オハヨウ。みなさま、おはようございます。素晴らしい都市にあたたかく迎えてくださいまして、ありがとうございます。私は、映画を愛することと同じくらいに東京も大好きです。本日はありがとうございます。アリガトウ。
タラネ・アリドュスティ:みなさん、おはようございます。これから拝見させていただく素晴らしい作品をみなさんとともに、本当に楽しみにしています。本日はありがとうございます。そして、この東京国際映画祭に参加させていただくことに、大変ワクワクしています。
スタンリー・クワン:みなさん、おはようございます。今回、映画祭で審査員をつとめさせていただくことを大変光栄に思っております。私は以前より、劇場の中で映画を鑑賞することにとても安らぎを感じています。今回は審査委員として、優れた16本の作品を鑑賞することを大変楽しみにしています。
南果歩:みなさん、おはようございます。昨日のオープニングからはじまり、いよいよ第31回東京国際映画祭がはじまりました。私もこのような素晴らしい審査員の方々と一緒に16本の作品を観れることをとても楽しみにしております。この東京国際映画祭の期間中は、本当にみなさんが映画を身近に感じて、色々な作品をご自身で選んで映画館に足を運んでくださることを心から願っております。私たちも愛を込めて、心を込めて、魂を込めて一生懸命に作られた選りすぐりの16本の作品を鑑賞できることをとても楽しみにしています。そして、この5人の中の1人に選ばれたこともとても光栄に思っております。11月3日までの期間中は、大いにみなさんと盛り上がって、東京や映画を身近に感じて、このお祭りを楽しみたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

――みなさんがこのコンペティションの審査員として参加をされて、期待されていることは何ですか?また、ブリランテ・メンドーサ監督は、東京国際映画祭の審査員長として、初めての役割を担いますが、そのお気持ちをお聞かせください。

ブライアン・バーグ:今回、素晴らしい作品を拝見させていただくことを大変楽しみにしています。私は、意図的に事前に作品の資料を見ないで鑑賞しようと思っています。実際に何も知識がない方が作品を初体験できると思っているからです。この映画祭の期間中には、作品に関する様々な話題が耳に入ってきますけれども、先ほど南果歩さんがおっしゃったように、本当にその作品の作り手が心と魂を注いで作っています。また、映画を制作することは、本当にた易いことではありませんので、素晴らしい作品をとても待ち遠しく思っております。
南果歩:ブライアン・バーグさんがおっしゃったことと全く同じ意見ですけれども、何の情報もなく映画を鑑賞したいと思っております。作品に対する第一印象は、とても重要なものではないかと思っています。自分の気持ちとしては、なるべく真っさらな気持ちで作品に出会いたいと思っています。普段であれば、映画を鑑賞する作品というのは、自分で選んで観ることになりますけれども、今回はこのような形で16本の作品を拝見するのは、私にとっても新鮮な機会となりますので、新しい作品と新しい世界に出会うということに非常に興奮しております。
タラネ・アリドュスティ:私も全く同じ意見です。私の国イランには、ペルシャ語のことわざがありまして、「人として、全て同じ目線で、同じ目で人をみる」という言葉があります。私も同じ目線で、同じ目で全ての作品を拝見したいと思います。この場が東京国際映画祭ということもあり、優れた素晴らしい作品が厳選されていると思いますので、私自身も自分の目で作品を観るときに、名前や国というのは忘れて、この16本の作品を同じ目で拝見させていただきたいと思っています。
スタンリー・クワン:私もみなさんがおっしゃったことに全く同意見です。例えば、『アリー/スター誕生』(2018年)ですけれども、私はレディ・ガガやブラッドリー・クーパー監督が大好きですので、香港で公開日に直ぐに拝見しました。ですから、『アリー/スター誕生』という作品はよく知っていて、鑑賞して楽しんだわけなんですけれども、今回のように審査員という立場で作品に触れるということは、ただ映画を鑑賞しに行くということではありません。今回、私は16本の作品に対して、どういう物語であるのか、監督が誰なのか、どこの国の作品であるのかという前情報は、何も知りたくはないんですね。全く何も知らずにその映画を拝見して、自分が何を直接感じることができるのか、自分の心がその作品に動かされるのかというところがとても大切だと思っております。
ブリランテ・メンドーサ:昨日、私たちは、今回のコンペティション部門の作品の審査にあたって、色々なガイドラインや情報をいただきました。そして、どのような形で選出されたのかなど、コンペティション情報をいただいたのですけれども、そういったことは、自分たちで把握をしておきながらも、最終的には、ここにいる私たちがこの16本の作品の中から東京グランプリや各賞を選出することになります。今回、この16本の作品は、1,800本以上の中から選ばれているとうかがっておりますが、大切なことは、私たちが本当に初めてこの作品に出会い、鑑賞するという興奮です。作品を鑑賞する際には、何の予想をせずにその作品を鑑賞するというのが映画の醍醐味だと思うのです。「良い映画とは何か?」ということもありますけれども、あまり頑なにガイドラインの指針に沿うというのではなくて、まず私たちが鑑賞して、初めてその作品に出会い、初めての体験をするということに尽きます。もちろん、最終的には、自分たちの心が動かされるか、感動するかということもあるのですけれども、それだけではなく、それと同時に映画的な言語がきちんと使われているかということも重要だと思っています。なぜなら、私たち審査員は一般の観客としてこの16本の作品に触れるのではなく、コンペティション部門の作品として鑑賞することになりますので、感動する作品であるとと同時に、映画的な言語を用いているかという点ももみることが大切だと思っています。この素晴らしい16本の作品が、そのような形で映画祭のために制作されていると思っているからです。

――ブリランテ・メンドーサ審査員長は、フィリピンからの参加ということで、国民のみなさんも審査員長として、どのようなオーガナイズや作品選びをされるのかということに期待していると思います。その点はいかがでしょうか?

ブリランテ・メンドーサ:今回、このような役割りを与えられまして、誠にうれしく、大変光栄に思っております。そして、審査員長として、名誉ある役割りをいただきましたけれども、私の祖国のフィリピンは発展途上国であり、先進国の日本の国際映画祭で審査員長ができるということも、非常に素晴らしいことだと思っております。フィリピンでは、今年から来年まで、フィリピン映画100周年を祝っていることもあり、私も映画の作り手として、アーティストとしても非常に重要な時期だと感じているので、日本のような素晴らしい国の東京国際映画祭という場において、審査委員長をつとめさせていただけることは、非常にうれしく思います。

――南果歩さんにおうかがいしたいのですが、今回、日本代表ということで審査員に入ったわけですけれども、ホスト国の審査員の立場として、何か意識していることはありますでしょうか。


南果歩:今回、審査員の1人として選ばれて、とても光栄に思っています。というのは、素晴らしい監督、プロデューサー、女優さんと、本当に私が今まで観た映画の中でも、とても影響を受けた作品に携わっている方々と同じ期間中にずっと一緒に同じ映画を観て、同じ時間をともに過ごすことができるからです。昨日からはじまったばかりで、今日はまだ2日目なんですけれども、この4人の方たちとはとても気心が知れて、もう仲間意識が芽生えています。それは、ここに並んでいる5人が本当に映画を愛し、映画に自分の人生を捧げ、そして、映画に未来や夢を持っているというところで、とても共通認識があるからだと思います。これまで、コンペティション部門に出演作が入っていたこともあるのですけれども、その関わりとはまた違う、本当に映画祭に最初から最後まで長い時間をかけて共有できるという喜びが今回はあります。そして、審査員としては、メンドーサ監督もおっしゃていましたけれども、やはり、グランプリを選ばなくてはなりません。各賞を私たちの判断で決めていく責任はものすごく大きいのですけれども、そこで私たちが今までに感じてきたことや映画に影響を受けてきたこと、映画作りの中で自分自身が葛藤してきたことなど全てを生かせるのではないか、また、別の形として、映画に一歩近づけるんじゃないかなという意味で、自分自身にとても期待しています。そして、こうやって過酷なスケジュールの中、みなさんにも朝早くから集まっていただいて、本当に感謝しているのですけれども、私たちは体調管理もしていて、今日はこの後に3本観るのですけれども、私の体調も本当に良くなってきています。本当に日々、向上しています。体力、気力十分でこの映画祭に望んでいるところです。

ホスト国については、東京国際映画祭31回目なんですけれども、せっかく東京で素晴らしい映画祭が開かれているということで、本当に世界中の映画人が「東京に作品を出したい」とこの映画祭に関わっていただけるように、今回は歴史の一頁なんですけれども、そう思っていただけるように、自国開催のホスト役として尽力したいと思っています。そして、この歴史の中で、「31回目は、思い出深いね」とみなさんに思っていただけるように私も関わっていきたいと思います。そして、この素晴らしい4人の審査員の方々が東京に来てくださったことに本当に感謝しています。みなさんの映画を観れば、どれだけ映画に情熱を注いでいるかということはお分かりだと思うのですけれども、ここ東京で出会えたことに感謝しながら、精一杯つとめたいと思います。

――みなさん全員に質問です。とくに女性の審査員の方々にお聞きしたいのですけれども、今回、16本のうち、女性監督の作品が1本と女性監督があまり参加していらっしゃらないと思います。全体的に映画際や審査員というものに対して、女性に対する責任としての平等性などに関しては、どう思われますでしょうか?

タラネ・アリドュスティ:私も実際にその役割りに対して平等であることは、もちろん願っております。今回、審査員としての役割りもありますが、ご指摘いただいたご質問の問題や課題もありますが、実際に映画界で女性の映画制作者というのは、マイノリティーであるということもあります。また、女性の場合は、どの分野においてもマイノリティーであるということは多くあると思います。これについては、本当に少しずつ、徐々に一歩一歩、歩みを進めているところではないかと思います。昨日、私たちがこの映画祭の運営に関してお聞きした際に、今年の東京国際映画祭では、女優の審査員が2名参加するということで、非常にうれしく思ったのですけれども、これこそ、また、小さな一歩として進んでいるのではないかと思っています。今回も良い方向に進むことを願っております。
南果歩:とても良い質問をいただいて、ありがとうございます。昨日、タラネ・アリドュスティさんとお話をしていました。もちろん、世の中には、男女比ということが半々が最も自然な割合だと思います。そういう意味では、今回、女性の審査委員が2人、来年は3人になっているかもしれません。そして、審査員長が女性になっているかもしれません。今年は、小さな一歩なんですけれども、年々、少しずつの変化を私たちが望み、私たちが発言することによって、実現していくのではないかと思っています。そして、今回、コンペティション部門の中では、女性監督が少ないことは残念なんですけれども、別のカテゴリーで女性監督をフューチャーしているところもあります。そういう意味でも、東京国際映画祭は、徐々に世の中の変化にものすごく対応、感応しているのではないかと、私も期待を込めて、そう思っています。今年、カンヌ映画祭でケイト・ブランシェットさんがこの問題に関して、声を大きく発言していましたけれども、発言することによって、みんながそれに賛同することで、少しずつ物事が改善していくということは、私たちの共通の認識として強く思っています。
ブリランテ・メンドーサ:私のフィルモグラフィーの通り、私がこれまでに手がけた13本の作品のうちの多くが女性に力を与える内容です。私が描いている女性のキャラクターというのは、非常に強い女性であったり、また、女性が役どころとして、とても重要な役所を担っているのですね。そして、フィリピンは色々ありますけれども、こういう問題がある中でも、2名の女性大統領を選出している国でもあります。色々と社会的な問題ではございますが、今回は映画祭でありますので、私たちは性別について評価しているのではありません。もちろん、女性が平等に扱われるべきであるという認識は非常に重要でありますけれども、この問題は今にはじまったものではなく、昔からあるものです。現在、その認識がより高まっているという状況だと思います。そして、将来的には映画だけではなく、政治や全ての分野において、全ての女性がきちんと平等に扱われるという女性の活躍を願っておりますけれども、今回は映画際という状況であります。私たちは、優れた作品をまず観て、作品を自分たちが評価するのであって、性別の平等性をみているわけではございません。
ブライアン・バーグ:このような質問に答えること自体が私自身も残念だと思います。今後、女性の審査員が3名であったり、5人全員が女性というときが来ても良いと思います。もちろん、このような問題について聞かれることは多くありますけれども、私自身、アメリカの映画の制作者でもありますので、ソフィア・コッポラ監督など、本当に優れた女性の映画監督もたくさんいらっしゃるんですね。私よりも尊敬に値する女性の映画制作者が世界中には多くいらっしゃいますので、本当にこういうことを聞かれること自体がおかしいのではないか思ってしまいます。確かに、このような質問が重要だということも理解していますので、いつの日か、女性が映画界で活躍するのが当たり前になり、このような質問が聞かれなくなる時代が来ることを私も期待しています。そして、多様性に関しましては、性別だけではなく、人種や国なども含めて、そういう日が来ることを願っております。

――ブリランテ・メンドーサ監督、もしも、5人の審査員の意見が分かれてしまったら、どのように東京グランプリや各賞を決めますでしょうか?

ブリランテ・メンドーサ:私も過去にそのようなことを経験してます。必ずしも、自分が好きな作品ではないから、その作品が良い映画ではないということではありません。良い映画、良い作品であっても、自分の好みではないこともありますので、審査員長としては、そのような姿勢で臨みたいと思っています。

第31回東京国際映画祭は、10月25日(木)から11月3日(金)まで、東京・六本木ヒルズ、EXシアター六本木、他にて開催中である。コンペティション部門の結果は、11月2日(木)のアウォードセレモニーで発表されて、11月2日と3日に各受賞作品が上映される。


記者会見の概要
開催日:2018年10月26日(金)
会場:TOHOシネマズ六本木 スクリーン7
登壇者:ブリランテ・メンドーサ(映画監督)、ブライアン・バーグ(プロデューサー)、タラネ・アリドュスティ(女優)、スタンリー・クワン(映画監督/プロデューサー)、南果歩(女優)

[スチール/文:おくの ゆか]

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