第32回東京国際映画祭(TIFF)『ネヴィア』公式記者会見レポート

初演技とは思えない!ヒロインを選んだ決めては、プロの役者が持たない「そこに真実がある」強さ‼︎


2019年10月29日(火)、第32回東京国際映画祭(TIFF)コンペティション部門にて『ネヴィア』の公式記者会見が東京・TOHOシネマズ六本木で行われて、イタリアのヌンツィア・デ・ステファノ監督と主演のヴィルジニア・アピチェラが記者会見にのぞみ、笠井信輔アナウンサーがMCをつとめた。

――脚本・監督のヌンツィア・デ・ステファノ監督です。そして、主演のヴィルジニア・アピチェラさんです。一言ずつ、ご挨拶をいただきましょう。
ヌンツィア監督:皆さん、こんにちは。ここに来ることができて、とても幸せです。今回、日本に来るのは、初めてですけれども、本当に日本のことを知りたいと思います。皆さんがとても素晴らしくて、とても感動しています。そして、少しナポリのような感じがします。どうぞ、よろしくお願いいたします。
ヴィルジニア:コンニチワ。 私もとても嬉しくて、大変感動しています。皆さんに気に入っていただけたら、非常に嬉しいです。ぜひ、よろしくお願いいたします。

――主演のヴィルジニアさんへ質問をさせていただきます。ネヴィアの「ここから自分は脱出しなければならない」という健気で真っ直ぐな思いに心を打たれたのですが、演技経験のほどは、どれほどであったのでしょうか。
ヴィルジニア:この作品が初めての演技経験です。とても素晴らしい経験になりました。準備段階では、キャスティングをしながら、監督や他の役者さんたちと一緒に演技の準備を行い、その間に、それぞれが自分の人物像を感じることができるように努めました。その人物像の中に、自分たちの中にある真実を盛り込むようにして、ある程度、その人物たちに柔軟性が生まれるような形で、自分の役をこなしました。彼女があの環境から出ていかなくてはならないという感情は、自分の中にもあり、監督の中にもあるものです。その感情が非常に強いものであったので、この役を努められたと思います。

――ヌンツィア監督にお聞きします。演技経験のない人を主演に使うというのは、大変、困難な映画作りだと思いますが、当初から、そのような計画だったのでしょうか。それとも、ヴィルジニアさんに何か光るものがあったのでしょうか。
ヌンツィア監督:ヴィルジニアについては、他の役でも試してみたのですけれども、彼女には、特殊なものがあると感じました。なぜ彼女を主役に選んだのかというと、自分と同じような性格であること、彼女に中に自分と同じ強さを持っていることを感じたからです。彼女を選んだ決めては、「そこに真実がある」ことを彼女に感じたからです。それこそ、自分が探していたもので、プロの役者が持っていないものだからです。ぜひ、言っておきたいことは、ヴィルジニアに決める前に3ヶ月間の長いキャスティングを行い、非常に様々なタイプのプロの役者たちと会いました。少年院にも行って、キャスティングをしたこともありました。それで、最終的に彼女にたどり着きました。このことをお伝えしたいと思いました。


《 Q & A  レポート 》

――大変美しい映画で好きな作品です。詩的な素晴らしい映画でした。監督が脚本も書いておられるので、台詞の中で感じたことを質問します。まず、冒頭のU字のターンのときに、黒猫がよぎるのですけれども、「黒猫がよぎると不吉なことが起きる前兆」とイタリア人はよく言います。また、妹エンツィアのセリフが詩的で「あなたは素敵ね。学校に行かなくて良いわね」というのですけれども、その詩がドヴォルザークのオペラ『ルサルカ』の「月に寄せる歌」というとても素敵な歌詞とダブルような感じがしました。最後は、イタリアの盲目の歌手でアンドレア・ボチェッリの曲の「コン・テ・パルティロ」の「再びあなたと一緒に旅に出よう」と、ネヴィアとエンツィアの2人で旅に出るイメージが重なって、非常に詩的で美しい映画だと感じました。僕の大好きなビル・エヴァンスが「いちばん大切なものは、真実と美しさだ」と言っています。監督が同じような真実を求めている言葉と響き合っています。

ヴィルジニアさんが鼻にサーカスの紅をつけますよね。あのときの気分はどうでしたか?最後のエンディングを予想したところ、 案の定、素敵なエンディングを迎えました。そのとき、あなたは18歳だったのですか、それとも、もう少しお年を召していらっしゃったのですか?ルサルカのオペラの主人公は水の精なんですよ。あなたは、カバに水を一生懸命にあげて、とっても楽しそうなカバの表情を見て、「ブラボー!」というあの台詞がとっても生きています。あなたの女優としての仕事がとても爽やかで、最後に涙してしまいました。素晴らしい!まさにイタリア的な音楽映画で、今までナポリを舞台にした色々な映画を観てきましたけれども、その中で私は最高、ナンバーワンです。ありがとう(一部省略)。
ヌンツィア監督:どうもありがとうございます。実際にこの作品の脚本も書いたわけですけれども、基本的には、教養小説だといえます。これを書くにあたり、苦しい思いをしました。自分たち自身を表現することは、非常に難しいことなので、苦しい思いもしました。自己分析をする羽目にもなり、子どもの頃の幼少期の思い出をたどり、色々なものが自分の中に湧きでてきたこともあります。台詞に関しては、どれも本物で実際に自分がこれまでの人生の中で聞いた言葉を使っています。登場人物たちにしても、本当にああいう人たちがいて、その人物を描いています。ただ、自分としては、そこから離れるようにしました。やはり、いちばん大事なのは、テーマであって、少女期から大人になる女性の気持ちを表すことが重要だったと思います。世界では、今でも色々なタブーがあり、男性主体の世界でもあります。男性が女の子の相手を見つけることが言われますけれども、そこから抜け出さなければならない、そういう女性の気持ちを描きたいと思いました。

猫に関しては、黒猫ではなくて、トラ猫なんですね。映画を撮っていると、動物がやってくることがあるのですけれども、この映画を撮っているときには、いつもこの猫がやってきて、撮影しようとすると、前を横切ったりするわけです。ですから、映像に入ったのですけれども、トラ猫もキャストの一人だと考えています。
ヴィルジニア:もうすぐ18歳になろうとする少女を描いていますけれども、この映画を撮影したのは、この前の冬で21歳のときでした。この映画に関しては、ジュリエット・マジリナーがやったフェリーニの『道』のトリビュートということがあって、赤い鼻は、それに捧げる意味でも使われていました。動物と仕事をするのは、非常に楽しくて、思わず笑みがこぼれるようなものですけれども、とくにカバに関しては、直ぐに口を開けてくれたので、「ブラボー!」と言わざるをえなかったです。
《 公式記者会見の概要 》
開催日:2019年10月29日(火)
会場:TOHOシネマズ六本木 スクリーン8
登壇者:ヌンツィア・デ・ステファノ監督、ヴィルジニア・アピチェラ、笠井信輔(MC)

[スチール/文:おくの ゆか]

《 『ネヴィア』ストーリー 》

©ARCHIMEDE 2019

ナポリ近郊、17歳のネヴィアは闇商売でしのぐ祖母と妹の3人で隠れるように暮らしている。殺風景な地にサーカスがやってきて、ネヴィアは興味を抱く。タフに生きる少女の姿がリアルで繊細な青春映画。プロデューサーはマッテオ・ガローネ。

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